君がくれた無垢な愛を僕は今日も抱きしめる
亮平が作ってくれた塩焼きそばは、ネギと豚肉がたっぷり入っていてごま油の香りが食欲をそそる。陽茉莉は盛り付けたお皿をテーブルへ運び、食卓を整えた。

「すっごく美味しそう」

「大したものじゃないけど、召し上がれ」

「うわぁ、いただきまーす」

ニコニコと美味しそうに食べてくれる陽茉莉を見て、亮平は幸せな気持ちになった。

亮平が料理をするようになったのは車椅子になってからのこと。この家に放り出されてから何もかも自分でやるように鍛えられた。

最初は長谷川にいろいろと手伝ってもらったし、料理なんてやる気も起きなかった。車椅子を扱うのだけで精一杯だったからだ。

お手伝いさんを雇おうかと親に打診されたこともあるが、変なプライドが邪魔をしてことごとく断った。だから結局あれもこれも自分でやるしかなかった。

結果的に、車椅子でも不自由なくいろいろなことができるようになったのだが。

(それを親のおかげだとは思いたくないな……)

ふん、と亮平は鼻で笑う。きっかけは親かもしれないが、努力をしたのは自分だ。それが今、陽茉莉を笑顔にさせていると思うと、誇らしく感じる。

「ねえ、今度私にも料理を教えて」

「うん、いいよ」

陽茉莉よりも秀でている部分があったなんて感慨深い。亮平はいつだって自信がなかった。何でも一人で出来ると思っているけれど、やはり障がい者なりの苦労はあるわけで、その辺りはどうしても健常者と比べてしまうことが多かったからだ。

けれど――。

「陽茉莉はやっぱりすごいな」

「うん? なあに?」

「いや、何でもないよ」

いつだってたくさんの感情を教えてくれる、呼び起こしてくれる陽茉莉。彼女には感謝しかないなと、亮平は一人微笑んだ。
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