ループ3周目の第二王子様!─溺愛同棲ルートに連れ込んで、無表情無口令嬢を泥デロ幸せにするまで─
ルーカスと同じ深い紫色の瞳に鈍い光を灯すウィリアムには、有無を言わせぬ長兄の圧がある。ルーカスは捻り上げたウィリアムの手をしぶしぶ払った。
悔しいが、ただでさえ権力の塊のウィリアムから、暴力を盾に不利な条件を突き付けられるわけにはいかなかった。
「可愛い弟だからね、今のは不問にしてあげる」
弟に握られて痛んだ腕を振るって痛みを飛ばすウィリアムは、どんな時でも笑顔だ。
にこにこ笑顔を貼り付けて崩さず、人の嫌がるところを的確に突く。兄のそういうところをルーカスは昔からどうしても好かない。
形式上の礼をしたルーカスは涙を堪えたレイラの腰を抱き直し、ウィリアムの横を通り過ぎる。
パーティ会場の端っこで勃発した王太子と第二王子の不穏な空気は、ホール中の視線を集めていた。
「ルーカス、明日の夜、僕の部屋においで。イエール国から来賓があるからね」
この言葉もすでに3回目。
何が起こるのかすでに知っているルーカスは、手を上げて御意を示す。
「来賓」の目的を思うだけで頭が痛かった。兄はルーカスが一番嫌なことをするのが好きなのだ。