ループ3周目の第二王子様!─溺愛同棲ルートに連れ込んで、無表情無口令嬢を泥デロ幸せにするまで─
ドアの前で立ち尽くすルーカスを赤の護衛騎士服を纏った青年はずっと観察していた。ルーカスがあまりに動かないので、ついに青年は口を開く。
「ルーカス様、いつになったらレイラ様の部屋に入るんですか?もうだいぶたちますよ?」
「今、心の準備をしているところだ」
レイラ専属護衛騎士のアイザックが薄茶色の目で瞬きを増やした。昨晩までレイラの実家である公爵家で一般傭兵をやっていたアイザックであるが、突然この第二王子に雇われた。一晩にして大出世だ。
『お前の力を貸してほしい』
奇妙な依頼であったが、破格で高待遇の仕事だった。突如として舞い降りた大きなチャンスにより、護衛騎士に成り上がったアイザックは、まだ主人のことをよく知らない。
(ルーカス様は驚異の純情だな。俺ならもう入って一杯お茶して終わるくらいの時間たったけどね)
ドアの前でいつまでも心の準備なんて、アイザックからすれば時間の無駄だと言い切れる。だが、そんな気持ちをおくびにも出さず、アイザックは爽やかに笑った。
「日が暮れそうですね。俺が代わりに開けましょうか?」
「放っておいてくれ」
一言でフラれたアイザックが肩を竦めて両手の平を天に持ち上げる。すると、まだまだレイラの部屋の前で二の足を踏んでいるルーカスに向かって、廊下の向こう側からカツカツ可愛い足音が近づいて来た。