ループ3周目の第二王子様!─溺愛同棲ルートに連れ込んで、無表情無口令嬢を泥デロ幸せにするまで─
「お兄様!私、聞いてませんわ!」
心の準備に忙しいルーカスの後ろに、両腕を偉そうに組んだ少女が仁王立ちした。
「何だベル。俺は忙しい。お前に構っている暇はない」
少女は高く二つくくりにした豊かな黒髪を片手で振り払った。少女の大きな瞳は深い紫色をしており、高級感溢れるふりふりドレスを愛らしく着こなしていた。
「ルーカス様、ご紹介いただいても?」
アイザックが隣に立つルーカスに小声で言うと、ルーカスはふぅと一つ息をついて少女をふり返った。愛らしさ輝く少女の年のころは10歳程度だ。
「妹のベルだ」
(あ、王女様ね)
「ベル、こっちはレイラの護衛騎士のアイザックだ」
「そんなこと、どうでもいいですわ!」
(挨拶もさせてもらえない!)
存在を完全に否定されたアイザックはしゅんと項垂れてサラサラで薄茶色の短髪を揺らした。
しょんぼりアピールをしたが、誰も相手にしてくれていない。
ルーカスはレイラで頭がいっぱい、
ベルは怒りで頭がいっぱいだ。
仲良く挨拶しようとしたのはアイザックだけである。高貴な皆様がみんな意思疎通しにくい。
「私は聞いてないと言っているのよ、お兄様!」
「何の話だ」
「レイラ様が王城に来るなら先に一報欲しかったですわ。お部屋の装飾だってこだわって、ドレスも新調したかったのに!」
「お前の都合など知らない……今、俺は忙しいと言っているんだ。部屋へ帰りなさい、ベル」
「お兄様!どうして、いつまでも私を紹介」
「アイザック、ベルを部屋へ連れて行け」