ループ3周目の第二王子様!─溺愛同棲ルートに連れ込んで、無表情無口令嬢を泥デロ幸せにするまで─
「事実を並べたら、勝手に泣いただけだよ」
「兄様がわざと泣かしたのではないと、存じてます」
「そうそう。わざとじゃないよ?そんなことしない」
ルーカスはレイラの前に手を広げて視界を遮り、ウィリアムにこれ以上彼女の泣き顔が晒されることを拒否した。
ウィリアムはまた笑顔を貼り付けて、ルーカスが改めてお辞儀して挨拶をし直すのを見ている。ウィリアムはとことん挨拶に厳しかった。
「ルーカス、こんなところに来て。君の新しい婚約者、セイディ様のお供はどうしたんだい?」
レイラの耳に、理解したくない言葉が届いた。
「婚前の顔合わせで、親密になるように命令したはずだよ?」
(ルーカス様に、新しい婚約者……)
「俺の婚約者はレイラです」
ルーカスがきっぱりとした声で事実を突き返すが、ウィリアムは笑うだけだ。
「明日にはどうかわからないよ」
肩を竦めたウィリアムは、ひょっこりと腰をまげてルーカスが後ろに庇ったレイラににっこり笑いかける。
「婚約破棄は、命令、だからね。じゃあね、レイラ嬢」
ウィリアムが去っても、レイラはその場から立ち上がることができなかった。
絶望だけが頭を占めた。
王太子の命令として下された婚約破棄は、絶対だ。