ループ3周目の第二王子様!─溺愛同棲ルートに連れ込んで、無表情無口令嬢を泥デロ幸せにするまで─
ルーカスが丁寧にレイラの前に跪いて語り掛ける。
「君に危機が常に迫っていることを、絶対に忘れないで欲しい」
真剣に懇願するルーカスの想いも、レイラの耳には何も届いていなかった。
(ウィリアム様からの婚約破棄命令。ルーカス様に、新しい婚約者……私はもう、ルーカス様の隣にいられない)
普段通り一言も発さないレイラの表情が、ルーカスの眼にも1㎜も動かないのが奇妙ではあった。
だが、レイラはいつもきちんと話を聞いていることを知っているルーカスは伝えるべきことは伝えたと、名残惜しみながら部屋を出て行った。
レイラはルーカスの背を目で追うこともなく、去った扉を見ることもなく、無の表情だ。
(遅すぎたのですね。全て。ウィリアム様の言う通り本当に私は今まで、何をやっていたのでしょうか。愚鈍過ぎますわ)
ウィリアムに抉られたコンプレックスが膿んで、レイラの中で後悔と自身への憎悪だけが膨らんでいった。
レイラの灰色にくすんだ瞳は虚空を見ているようで、何も見ていない。
(ルーカス様の隣にいられないなら、生きる意味なんてあるのかしら)
ただただ綺麗過ぎる人形令嬢がそこにいた。