ループ3周目の第二王子様!─溺愛同棲ルートに連れ込んで、無表情無口令嬢を泥デロ幸せにするまで─
話はそこで終わり、ルーカスは執務室を後にした。
(守るべきはレイラとの婚約か、
国の平穏かだと?クソみたいな話だ)
一階の廊下でふと立ち止まったルーカスは、右手の拳で思いっきり石の壁を殴る。だが、むしゃくしゃした気持ちが拳の痛みに紛れることもなく、気分は少しもマシにならなかった。
理不尽な問いに、苛立ちだけが募った。
ルーカスは、深く深く息を吐き出して落ち着きを取り戻そうと努めた。石壁に背を預けてルーカスは薄暗い廊下で左右をゆっくりと見つめた。右か左かなんて選べやしない。
(俺はレイラも国も、守ってみせる)
窮地に立たされ、ルーカスは強欲なわが身を初めて知った。
右も左も選ばない。
廊下の窓を押し開けて乗り越え、ルーカスは庭に飛び降りた。
中庭には明るい月の光が差し込んでいた。
右か左しかないなんて、そんなことはない。
(イーリス国も一枚岩ではないと兄様は言った。そこに、セイディ様と話し合う余地があるかもしれない)
ルーカスは庭に出て月を見上げ、新しい道を探す決意をした。
(レイラの隣は、誰にも渡さない)