恋は千年、愛は万年。
「アキさんも食べる?」
近くに座っていたソウ君に尋ねられ、僕はユルリと首を横に振った。
『僕は良いよ、お腹空いてないし』
正直なところ、お腹が空かないというより食べなくても平気なのだ。
そう思うと僕って、ほんと化け物だよね。
人間になりたい欲望が強まるのはこんな時。
普通じゃないって自覚するのは、結構辛い。
「駄目ですよ、ちゃんと栄養取らないと。
僕の分けてあげますから」
ソウ君に腕を引かれ隣に座らされた僕は、箸でつまんだ沢庵を差し出される。
口元に寄せられたソレに、僕は無言でソウ君に白けた目を向けた。
『…分けてあげるって、ソウ君が嫌いなだけじゃん』
この人、うまいこといって嫌いなもの処理させようとしてきやがった。
ソウ君は「何で知っているんだ…」と言わんばかりの目をしていた。
イタズラがバレた子供みたい。
おかしくて、クスリと笑みが溢れた。
何で知ってるのか?
十年前も似たようなことされてたの思い出したんだよ。
昔もソウ君好き嫌い激しかったからなぁ。
残すのも勿体ないし、仕方ない、と箸に掴まれた沢庵を口に含む。
カリカリと歯で噛み締めた。
ん、久々に食べたけど、おいしい。
食欲はないけど、味覚はちゃんとあるからね。
「……っ!」
淡々と咀嚼する僕に、ソウ君は茹でダコみたいに顔を赤くして口を開閉していた。
沢庵を飲み込んだ後、動かないソウ君に『早く食べなよ』と促す。
すると、何故か肩を小突かれた。痛い。