恋は千年、愛は万年。
其一
『はぁ〜、やっぱり京都が一番だなぁ』
十年ぶりの空気を胸いっぱいに吸い込む。
京都の町は、十年前よりも賑わい、活気に満ち溢れているように見えた。
なんて言ったって、文化の町だもんね。
農村と町とで格差はあるようだけど、発展しつつある。
文明開化まで、あと数年かぁ。
大勢の人が行き交う様を横目に、宛もなく歩く。
僕は、後数年何をして過ごそうかな。
お父様との約束まで、あと少し。
やっと念願が叶うんだと思うと晴れやかな気持ちになる。
とはいえ、やることもやりたいこともほぼやったしなぁ。
んー、京都って何があったっけ?
祇園でしょー、清水でしょー。
あと、…壬生?
壬生、と頭に浮かんで首を傾げる。
ん?壬生って確か田舎だったよね?
田舎って、言っちゃ悪いけど、大したもの無かった気がするんだけど。
それとも、誰か知り合いがいたんだっけ?
あー、駄目だ、モヤモヤするぅ。
はっきりと記憶を思い出すべく、一瞬立ち止まって目を閉じる。
ー「アキ!」
ー「アキさん!遊ぼう!」
1つ記憶の欠片を掴めれば、するすると芋蔓式に出てきた。
古い記憶はよく忘れてしまうけど、必ず頭のどこかには残されているのだ。
人の声、顔、出来事。
頭の中に流れる映像に、僕はようやく思い出せた。
あぁ、壬生にはあの人達がいたか。
トシくんや、ソウくん。
今、京都の治安を守る壬生浪士組の剣士達の発祥の地が、壬生だった。
トシくん達は、あれから剣士になったんだなぁ。