恋は千年、愛は万年。




『芹沢さんが素直だ…!!』


横暴で不遜と有名な芹沢さんが!

余計な仕事を増やされたことに対して、軽い腹いせをしてみた。


口元を覆って、大げさに感動すると、芹沢さんはまんまと青筋を立てた。


「…貴様、それはどういう意味だ。
 もう一度言ってみろ」


言ったら殺す、と目が物語っている。

しかし、それでも僕は言わせてもらう。




『単純ですね』

この時、無駄に良い声を意識した。


瞬間。


「…叩き切ってやる、そこに直れ」


ギラリと刀を抜いた芹沢さんの圧の重さは、壬生浪士組一だと感じた。

鬼の権化(トシくん)にも負けないね!

けれども、僕には関係ない。



『嫌ですぅ』



ベーッと舌を出して抵抗したら、芹沢さんは「餓鬼か、貴様」と憎々しげに呟く。

しかし、そこまで殺る気はないらしく、直ぐに刀をしまった。


僕の精神が子供じみていることは自覚している。

年齢的にはアンタより上なんだけどね!


…って、そういえば、鉄扇じゃなくて刀取り出すの初めてみたなぁ。

え、本気切れしたってこと?違うよね?



「まぁ良い、これからも精進するように」

『ぅわ!』


音もなく芹沢さんは僕の前に立つと、頭をガシガシと撫でくり回す。

撫で回す手は、意外に温かい。

絆されかけてハッとした。


いやいや、そうじゃなくて!

髪が乱れるじゃないかっ!

報復のつもりなら受けて立つぞ!?


前が見えずに怒る僕は気付かなかったが、その時の芹沢さんはとても優しい顔をしていたらしい。




< 36 / 82 >

この作品をシェア

pagetop