恋は千年、愛は万年。
『芹沢さんが素直だ…!!』
横暴で不遜と有名な芹沢さんが!
余計な仕事を増やされたことに対して、軽い腹いせをしてみた。
口元を覆って、大げさに感動すると、芹沢さんはまんまと青筋を立てた。
「…貴様、それはどういう意味だ。
もう一度言ってみろ」
言ったら殺す、と目が物語っている。
しかし、それでも僕は言わせてもらう。
『単純ですね』
この時、無駄に良い声を意識した。
瞬間。
「…叩き切ってやる、そこに直れ」
ギラリと刀を抜いた芹沢さんの圧の重さは、壬生浪士組一だと感じた。
鬼の権化(トシくん)にも負けないね!
けれども、僕には関係ない。
『嫌ですぅ』
ベーッと舌を出して抵抗したら、芹沢さんは「餓鬼か、貴様」と憎々しげに呟く。
しかし、そこまで殺る気はないらしく、直ぐに刀をしまった。
僕の精神が子供じみていることは自覚している。
年齢的にはアンタより上なんだけどね!
…って、そういえば、鉄扇じゃなくて刀取り出すの初めてみたなぁ。
え、本気切れしたってこと?違うよね?
「まぁ良い、これからも精進するように」
『ぅわ!』
音もなく芹沢さんは僕の前に立つと、頭をガシガシと撫でくり回す。
撫で回す手は、意外に温かい。
絆されかけてハッとした。
いやいや、そうじゃなくて!
髪が乱れるじゃないかっ!
報復のつもりなら受けて立つぞ!?
前が見えずに怒る僕は気付かなかったが、その時の芹沢さんはとても優しい顔をしていたらしい。