恋は千年、愛は万年。
「アキ、アンタは働きすぎだ」
『それを言うならトシくんも仕事の虫じゃん』
トシくんは自分にも他者にも厳しいからなぁ。
ぼんやりとそんなことを考えていたら。
「馬鹿か、アンタは!
何日動き回ってると思ってる?!」
ピシャッと大声を放たれて、思わず肩を縮こまらせた。
いつもながら、切れると迫力が凄い。
えーと、何日稼働してるか?
文久三年の三月末に務め始めたから…。
『一月?』
答えた瞬間、トシくんの眉間に更に皺が増えた。
そんなに皺寄せてたら、取れなくなっちゃうよ?
「よし決めた、アンタは今日休みだ。
好きに過ごせ」
唐突な言葉に、ポカンと呆けてしまった。
え?休み??一日???
『料理は?』
僕の得意分野もしちゃ駄目なの?
縋るように見つめたら、トシくんはウッと何故か胸を押さえた。
「…っ、駄目だ」
少し名残惜しそうなトシくんだったが、取り消すつもりは毛頭ないようで。
僕は心の中で舌打ちした。
料理も駄目なんて、あり得ない。
大体家事もしないで何して過ごせっていうんだよ。
かなり不満だったけど、トシくんの般若顔を見て、言葉を噤んだ。
…僕としては体力的に全く問題はないけど、無休で働いた結果で人間らしさが欠けていると思われるのは困るし、今回は大人しく休むしかなさそうだ。
その後仕方なく休暇を受け入れた僕は、手持ち無沙汰に屯所内を彷徨くことになった。