恋は千年、愛は万年。




その後、宛もなくブラブラしていたら廊下の角で斎藤さんとぶつかった。


『わ!』


必然的に、僕よりも背が高い斎藤さんの胸に飛び込む形で顔が埋まった。

眼の前の視界が黒一色になる。

短い時間ながら、斎藤さんの胸に埋まりつつ考える。

斎藤さんって、胸筋凄そう…。

胸板厚いし、流石鍛え抜いた剣士だなぁ。


「…っ、アキ、大丈夫か?」


僕を受け止めた斎藤さんは何故か赤面した後、慌てて身体を離した。


『大丈夫だよー、斎藤さん。

 ぶつかっちゃってごめんね』


斎藤さんとは食事の時に席が隣だから、よく話す。 

たまにソウ君が間に入ってちょっかいかけてきて話を邪魔してくるんだけど。

それでも、食事以外でも会った時に雑談できるくらいには仲良くなれたと思う。

僕に“敬語を遣わなくてもいい”って言ってくれたし。


斎藤さんって無口な印象だけど、話しかけたら割と喋ってくれるんだよ。


ニコニコして斎藤さんを見上げたら、斎藤さんは少し緊張した面持ちで僕を見つめていて。


「…アキ、俺のことは下の名で呼んではくれないか?」


名前呼び!仲良し度が上がる!

単純な僕は満面の笑みを向けた。


『いいですよ、一さん』

「…あ、ありがとう」

『いいえー』


斎藤さんの顔、茹で蛸みたい(笑)



< 39 / 82 >

この作品をシェア

pagetop