恋は千年、愛は万年。
十年前に、とある理由から難を逃れるために、壬生の地に一月ほど滞在してたんだ。
誰も知らない土地で迷子になってた僕は、剣道の稽古帰りのトシくんに出会った。
トシくんは中性的な美丈夫だったから、最初女かと思ったんだっけ。
そんで、女?って聞いたら殴られて吹っ飛ばされたんだよね。
まさか同い年くらいの男の子にそこまでされるとは思わなくて驚いたものだった。
トシくん、まだ十代だったのに剣や武術が鬼みたいに強かったから、めちゃくちゃ痛かったなぁ。
地面に転がされて怪我をした僕は(怪我はすぐ治ったにも関わらず)手当を理由に図々しくトシくんの家に上がり込んだ。
そして、トシくんの両親を泣き落とし、居候をさせてもらって色々家事やったりして生活していた。
ソウ君っていう幼い可愛い男の子がトシくんの家によく遊びに来ていて、一緒に鬼ごっこや隠れんぼなどをやったりもしていたなぁ。
しかし一月して、僕は止む終えない事情から、勝手に姿を消して壬生、いや京都から飛び出して全国一周の旅に出たんだった。
十年の月日って案外長いもんだなぁ、思いっきり忘れてたわ。
あの時は自分のことしか考えていなかったけど、よくよく考えたら僕最低じゃない?
今度顔合わせたら、殴られかねない…。
トシくん達に心配かけちゃったかなぁ?いや迷惑の度合いが強いか。
いきなり居候がさようならの言葉もなくトンズラしたら怒るよね。
ごめんね、せめてお礼のお金を渡すべきだったよ。
壬生浪士組の屯所とやらに行ったら、お金を渡して貰えるかな?
これでも全国一周しながら働いてたから、稼ぎは結構ある。
1両くらいだったら、恩返しになるかな?
よし、壬生浪士組の屯所へ行こう。