恋は千年、愛は万年。
其の五
甘味処を出て、他にも京の町の各所を散策し回った僕達は、夕方頃に屯所へ帰ってきた。
ふぅ、思いの外満喫したなぁ。
「只今帰りました」
『ただいま帰りましたぁ』
僕と一さんは声をかけるが、ソウ君だけ何も言わず門を潜っていく。
その様子を見て、大きくなったとはいえ、若さを感じた。
思春期なんだなぁ、ソウ君は。
どうして年頃の男の子は挨拶をしたがらないのか分からない。
僕は別に家族ではないし、ここは家とは違う空間だから、叱る筋合いもないけど。
もし家族だったら『挨拶くらいしろ』と注意しているかも。
だって、帰ってきたら挨拶するのはお互いの関わりにとって大切なことじゃん。
一方通行って、何だか寂しいし。
「アキ君、帰って来て早々に済まないんだが、夕餉の手伝いを頼めないかな!?」
僕の声を聞いて飛んできた井上さんに、僕は笑顔で頷く。
『勿論です!』
誰かと遊ぶのも息抜きになるし、楽しいけれど。
やっぱり、僕にとっては家事が一番楽しい。
もう十分休んだし、働いてもいいよね?
鬼と化すトシくんが容易に想像できたが、即座に頭から消し去って知らぬ振りをした。
思い返したら、昼餉も僕無しで切り盛りするのは大変だっただろうし、休みもらった分張り切るぞ!
井上さんと共にバタバタ走って厨に向かう僕を見送るソウ君と一さんは「仕事人間だな」と声を揃えていたそう。
夕餉を作り終えて配膳し、食事が始まり、終われば皿を片付けたり洗ったり。
いつも通りに全ての家事を卒なくこなす。
これは余談だけど。
夕餉の時、昼餉は僕が作っていなかったため、僕の料理の味を占めた隊士達から「やはりアキさんのご飯は最高です!」と拝まれた。