恋は千年、愛は万年。
トシくんの目に宿る力強さと心配に僕は、一瞬口を開けて、それから閉じた。
暫く、沈黙を貫いて。
『…ごめんね、トシくん。
僕のことは教えられない。
でも、もし僕のせいでトシくん達に何かあったら…。
遠慮なく、僕を斬り捨ててほしい』
僕はそっと眉を下げて、トシくんに言った。
たとえ、間者と疑われ殺されるとしても、僕は口を割るつもりがないから。
「…っ!」
苦しげに歪めるトシくんに、僕は少し罪悪感を感じたけど、それでも譲れなかった。
ごめんね、トシくん。
いつか伝えられる日が来るのなら良かったのにとは思う。
だけど、僕の頭が現実を知らせる。
…どんなにもどかしくても、僕が願う“いつか”なんて、永遠に来ないんだって。
如何なる理由があっても。
僕の願いを叶えるためには、教えることだけは絶対にできないんだから。
「…ア「アキさん?」」
トシくんと重なった声。
縁側に座る僕達を見つけたのは。
『あ、ソウ君!どうしたの?』
不思議そうな顔をしたソウ君だった。
「いや、帰ってこないなと思って…」
ソウ君は、部屋に戻らない僕を探しにきたらしかった。
僕とトシくんが一緒に縁側に腰掛けているのを理解した途端、眉を顰める。
「何してるんですか、早く寝ますよ」
『はーい、トシくんお休み!』
腰を上げると、ソウ君の元へ駆け寄る。
トシくんは、まだ何か言いたげだったけれど、今までのやり取りをソウ君には聞かせたくないのか特にお咎めはなかった。
「…お休み」
トシくんはどこか寂しげな目をして、僕にそう返しただけだった。
少しピリピリしたソウ君に手を惹かれ、考える。
多分、トシくんは簡単には引き下がらないだろうから、また逃げる対策を考えなきゃなぁ。