恋は千年、愛は万年。





『島原…って、確か遊郭だよね』


まぁ、ここは男所帯だし、疲れを癒やしに行くなら、妥当の場所だ。


そして、遊郭とは。



綺羅びやかな飾りをつけ、

美しい着物を身に纏う、

綺麗な美女がわんさか居て、

歌に踊りに酌までしてくれる夢の場所。



しかし、僕は十年前に京都で過ごした記憶を思い出して、僅かに頬を引きつらせた。

色々あったなぁ、あそこでも。


でも、なぁんだ、遊郭へ打ち上げにでも行くってことね。

僕のご飯が嫌になったとかじゃなくて良かった。

もしそうだったら問答無用で飛び出していくところだったよ。



『行ってらっしゃい』



勿論、僕は行かないけどね。

只の小姓だし、何もしてないし。

ヒラヒラと手を振って、見送る体制でいたら。


トシくんにガッと腕を掴まれた。


「何言ってんだ、アンタも行くに決まってんだろ」


何故!??


『ええぇー!?』


トシくんの不敵な笑みに、逃げることは不可能だと察知した。

僕は、ガックリと肩を落とす。


「アキさんも行くんですか?」


意気消沈していると、何時の間にか玄関に戻ってきていたソウ君に話しかけられる。


『…命令だからね』


そう答えたら、ソウ君は他人事のように「ふぅん」と気の抜けた返事をした。



……強制参加で吉原とか、嫌な予感しかしないよぅ。



< 56 / 82 >

この作品をシェア

pagetop