恋は千年、愛は万年。
大阪へ行っていた人達が帰って来て間もなく、壬生浪士組一同は島原に行った。
「ようこそ、おいでやす」
出迎えてくれたのは、一人の遊女だった。
この、凛としていながら、鈴の音のような美声は…っ!
深々と頭を下げるその人が誰なのか、最後尾に立っていた僕は直ぐに気がついた。
あ、灯里さんだ!
何故気がついたのか?
ここは昔、僕が働いてたところだからである。
うわぁ…、過去が甦ってしんどい。
よりによって、ここに来てしまうとは…。
半年は過ごしていたから、忘れられるはずがない。
一瞬で冷や汗がダクダクと全身を伝う。
ここの人は僕が男ってわかっていたし。
つまるところ、バレないで遊郭の中へ入ることは無理なのだ。
入ったとしても、誰かしら僕を知る人が存在している気しかしないし。
続々と中へ入っていく皆に、僕の足は微動だにしなかった。