恋は千年、愛は万年。
は、入りたくない!!
このまま逃げ出したら駄目かな??
僕は今切実に、屯所へ帰りたい!!
逃げ出す覚悟を固め、踏み出そうとしたが、抵抗も虚しくトシくんに首根っこを掴まれ引きずられる。
「おい、さっさと行くぞ」
『わぁ!?』
待って待って、やめてぇえ!!
軽く抵抗しながらもトシくんと一緒に、灯里さんの前を通過しようとした時。
『……っ』
「…あなた、紅王さん?」
灯里さんの白くて細い手は僕の袖をヒシッと引き止めた。
顔を向けると、灯里さんと目が合う。
あぁ、灯里さん、可愛い少女から絶世の美女になったんだなぁ。
いい香りまでするし、成長が凄い。
…って、やっぱり一瞬で気づかれたぁああ!
「…は?べにお?」
意味がわからず怪訝そうなトシくんをよそに、灯里さんは確信したようで、ガバッと抱きついてきた。
こら、立派な女性が無防備に抱きついてきちゃだめでしょ。
「紅王さん、会いたかったどすわぁ!
えらくお久しぶりやないですか?」
昔のように笑顔をいっぱい咲かせて擦り寄られ、僕はついに観念した。
十年の月日が流れても尚、縁とは途切れぬものだ。
『…久しぶり、灯里さん』
彼女を受け止めると、ニコリと微笑む。
すると、灯里さんはパッと離れた。
「そうや!皆にも知らせないとあかんわ。
紅王さん来たでぇ、皆ぁ!!」
声を張る灯里さんに、僕は目を見開く。
『え、ちょ、灯里さ…』
待って、と咄嗟に手を伸ばす。
そんなことしなくていいからぁ!