恋は千年、愛は万年。
声の持ち主の方を見ると、儚げな印象を受ける美青年が刀を携帯し近づいてきていた。
彼の一声で、途端に周りがザワつきだす。
「ひぇ!壬生浪士組だ!」
「逃げろ」
野次馬をしていた人達は恐れを口々に囁やき合いながら逃げていった。
壬生浪士組?なんだ、巡回してたんじゃん。
登場がおっそいなぁ。
もう倒しちゃったよ。
「何かありましたか?」
彼は甘味処の荒れ具合を観察し、冷静に甘味処の主人に質問する。
ん?あれ?僕も一応甘味処の主人と一緒にいるんだけど、僕には反応なしなの?
甘味処の主人は、地面に寝て動かない浪士を恐る恐る指し示す。
「ソイツが店で暴れ回っておりまして」
うんうん、と同調して頷く。
甘味処の主人は、次に笑顔で隣にいた僕の方を向いた。
「この方が成敗して下さったんですわ」
それまで無視されていた僕に、美青年の視線が移る。
「…?この人が?」
怪訝そうな顔をした美青年。
まぁ、倒れてる浪士は体格もでかいし、僕みたいな童顔で細い男が殺ったなんて想像だにしないだろう。
パチと目が合って暫く見つめ合う。
すると、彼は一瞬ハッと目を瞠った。
「…アキさん、ですか?」
ポツリと呟かれた言葉に、僕は首を傾げる。
ん?何で僕の名前知ってるの?
知り合いにこんな美青年はいない…けど、他の美丈夫ならいたなぁ。
「知り合いだっけ?」
肯定するわけでもなく、そう尋ねたら彼はみるみる顔を険しくした。
「沖田総司という名を忘れたとは言わせませんよ?」
あ、また忘れてるパターンか。
誠に申し訳ない…。
ごめんね、十年振りの京都だから。
「…沖田、総司…そう、じ…そう…」
思い出すべく、言葉を繰り返した。
そして、壬生浪士組、総司、と脳内で文字を羅列し、思い出したのは1つ。
「…え、ソウ君なの!?」