恋は千年、愛は万年。



『ご要件は何でしょうか』

スンと表情を無にして言う。

こういう相手は冷静に対応するのが一番。


出来るだけ近くには寄らないように、且つ、何時でも逃げれるように障子の側に腰を下ろす。

芹沢さんは警戒している僕に「そんなに硬くなるな」と茶化してくる。

いや、この人顔はいいけど、女垂らしまくるわ、物破壊するわ、クズだからね。

百歩譲っても不仲な上司と部下止まりよ。


信頼関係など築けるわけがない。

てか、関わりなんて最低限でいい、本当に。

私的な話とか論外だし…。

とか思っていたら。



「貴様は好きなヤツがおるか?」 

遠慮なく私的な話をぶっ込んできた芹沢さん。

言ったそばから…。

頭がガンガンしてくる。



『…は、何ですかいきなり』


予想だにしない話の振られ方に困惑。

好きな人…だって?

何が悲しくて上司と恋話をしないといけないのか分からない。


不審者でも見るかのような目を向けると、「貴様は顔がいいし、経験豊富そうだしな」と顎に手をやる芹沢さん。

経験豊富とか何処見て思ったんだ?

てか、その言葉、そっくりそのままお返ししますよ。


「実は恋人の梅という女に何か贈ってやりたくてな。

 貴様に意見を求めたい」



…芹沢さん、聞く相手を間違えていると思う。



< 71 / 82 >

この作品をシェア

pagetop