恋は千年、愛は万年。
「芹沢はんはほんまは優しいんやで」
何ともいじらしい返事が戻ってきて。
愛しい人を思い浮かべて微笑む梅さんが美しかった。
本当は優しい、か。
僕の頭を撫でる手付きが思い出されて。
『…それは、確かに』
あの人の根は、きっとそうなんだろうな。
小さく頷くと、梅さんは「やろ」と嬉しそうに笑う。
心から幸せそうな梅さんに、ズキリと小さな胸の痛みを感じた。
あと、少しで、全部壊れてしまうのに。
あぁ、なんてこの世はままならないんだろう。
暫く道の端っこで談笑していたら、何処からともなく怪しげな視線を感じた。
キョロキョロと辺りを見渡したら、人気の少ない路地から此方を見つめる複数の浪士達の姿。
隠れているつもりなのかな?バレバレですけれど…。
うーん、これは…狙ってるね。
“僕”のこと。
男達の目は、梅さんには一切向けられていない。
敵を見るような視線…てことは長州藩とかの人間だったりするかな。
壬生浪士組の屯所から出た辺りからなんかいるなぁとは思ってたけれど。
面倒な予感しかしない。
これ以上梅さんといると人質にでもされそうだし、とりあえず安全なところまで送ろう。
『今から何処かへお帰りですか?
それならお送りしますよ』
「えっ、そんな…えぇの?」
『はい、危険ですし』
「なら甘えさせて貰うわ、おおきに」
梅さんにはバレないように、不安にさせないように家の近くまで送り届けた。
そして、踵を返し、人通りが少ない場所へと向かう。