恋は千年、愛は万年。
何事もなかったかのように屯所へ戻ると、廊下で原田さんと出会した。
原田さんって、僕のこと嫌いなのかな?
ずっとのらりくらりと避けられている気がする。
『ただいま帰りました!』
試しに笑顔で話しかけてみるも「おかえり」と棒読みで返された。
笑顔もぎこちないし。
どう見てもいつもの明るい感じじゃない…。
や、やっぱり嫌われてるのでは!?
本人の意図を知る由もなく勝手に落ち込んだ僕は悄気げる。
気まずい雰囲気にしたくなくて、さっさと通り過ぎようと早足で歩き出した。
すると、原田さんは突然僕の右腕を掴んだ。
『えっ?』
原田さん、いきなり何を!?
「…怪我、したのか?」
原田さんは僕の袖をジッと見下ろしていた。
そこには、僅かに血が付着していて。
凍りつきそうになった。
や、ば…隠しきれてなかった!!
しかし、動揺を少しでも悟られてはならない為、僕は出来るだけ自然に話す。
『余所見をしていたら転んでしまいまして。
そこまで酷い怪我ではないので、平気です』
今にも剥がれそうな面を保ち、ニコと微笑んで見せる。
原田さんは少しだけ眉を寄せると「そうか」とだけ返して手を離すと去っていった。
ここの人達は皆鋭いなぁ。
冷や汗ダクダクだし、心臓が煩い。
あー、怖かった。
でも、何で原田さんは僕に話しかけてきたんだろう?
嫌われてる…んだよね?