恋は千年、愛は万年。



僕の朝は早い。

日が昇る前には身体を起こす。


「んー…アキ、さん?」

『わ、…ソウ君?』


そっと起き上がったつもりだったけれど、ソウ君の目を覚まさせてしまった。

寝ぼけているのが、僕の袖を掴んで離さない。

んん、と唸っているソウ君。

完全に覚醒はしていないみたい。


あー、ソウ君って基本的に寝起き悪いんだっけ?

最初こそはきちんと起きていたけど、最近は眠気が勝るのか限界まで寝ている。

ふふ、まぁ起きられないソウ君も子供みたいで可愛いけど。


『ソウ君、僕朝餉作るから離して』

ね?とソウ君の手を撫でながら囁くと今度は手を握られた。

痛くない程度に、強く。


「…いなく、ならない?」


か細く小さい声で尋ねれて、目を見開いた。

ソウ君は、よくその質問をする。

それに対して、僕は、いつも明確な答えを与えてあげられていない。

…だって、保証のない約束なんてしたって守りきれる自信がないから。


ただ、ソウ君の手を握り返すことしかできない僕は最低かな。


「…アキさん」


ソウ君は目を閉じたまま、柔らかく笑う。

なんて無防備で可愛い。

この笑顔はきっと僕しか見られないだろう。


『…んー?』




「大好き」

とても優しい響きだった。


…な。

ソウ君がデレてる…!?

だ、大好き?僕のことを?ソウ君が?

僕は男だぞ、と思ったけれど、自然と気持ち悪くはなかった。

そこは、彼への信頼があるからだろう。


驚いてソウ君の方を見たら、ソウ君はまた寝落ちていた。

袖を握っていた手もストンと布団の上に置かれていて。

うわ、この子、魔性かもしれない。

一瞬、ソウ君にもっていかれるかと思った。


『………』


寝ぼけていたとはいえ、ソウ君は恐ろしい子だ。

僕は、率直なソウ君の言葉に暫くその場を動けなかった。


< 79 / 82 >

この作品をシェア

pagetop