恋は千年、愛は万年。
僕の朝は早い。
日が昇る前には身体を起こす。
「んー…アキ、さん?」
『わ、…ソウ君?』
そっと起き上がったつもりだったけれど、ソウ君の目を覚まさせてしまった。
寝ぼけているのが、僕の袖を掴んで離さない。
んん、と唸っているソウ君。
完全に覚醒はしていないみたい。
あー、ソウ君って基本的に寝起き悪いんだっけ?
最初こそはきちんと起きていたけど、最近は眠気が勝るのか限界まで寝ている。
ふふ、まぁ起きられないソウ君も子供みたいで可愛いけど。
『ソウ君、僕朝餉作るから離して』
ね?とソウ君の手を撫でながら囁くと今度は手を握られた。
痛くない程度に、強く。
「…いなく、ならない?」
か細く小さい声で尋ねれて、目を見開いた。
ソウ君は、よくその質問をする。
それに対して、僕は、いつも明確な答えを与えてあげられていない。
…だって、保証のない約束なんてしたって守りきれる自信がないから。
ただ、ソウ君の手を握り返すことしかできない僕は最低かな。
「…アキさん」
ソウ君は目を閉じたまま、柔らかく笑う。
なんて無防備で可愛い。
この笑顔はきっと僕しか見られないだろう。
『…んー?』
「大好き」
とても優しい響きだった。
…な。
ソウ君がデレてる…!?
だ、大好き?僕のことを?ソウ君が?
僕は男だぞ、と思ったけれど、自然と気持ち悪くはなかった。
そこは、彼への信頼があるからだろう。
驚いてソウ君の方を見たら、ソウ君はまた寝落ちていた。
袖を握っていた手もストンと布団の上に置かれていて。
うわ、この子、魔性かもしれない。
一瞬、ソウ君にもっていかれるかと思った。
『………』
寝ぼけていたとはいえ、ソウ君は恐ろしい子だ。
僕は、率直なソウ君の言葉に暫くその場を動けなかった。