恋は千年、愛は万年。
その晩、たまたまトシくんの部屋の前を通りかかった。
その中から複数人が集って、謀策を企てている声が耳に入った。
謀策を実行する人達の名前は、無論全員近藤派。
近藤派が集まり立てる謀策なんて、分かりきったことだよね。
ー…芹沢派の、暗殺。
…大方、上から“芹沢さん達を殺せ”と命令があったのだろう。
言わば、邪魔者を消す口実みたいなものだ。
全部を知っている僕は目を伏せると、立ち止まることなく通り過ぎる。
そして、ソウ君のいない部屋に戻り、壁に凭れかかって座り込んだ。
ー「芹沢さん、テメェを殺す」
ー「殺れるものなら殺ってみろ、土方」
脳内を支配する映像。
想像でも妄想でもない、予知能力。
僕の知ったことではないはずなのに、心が軋んで、苦しい。
どうして僕は誰かの痛みを想像してしまうんだろう。
歪む顔を隠すように両手で押さえた。
『…仕方ない、…仕方ない、じゃないか』
弱々しい口調で自己暗示を繰り返す。
芹沢さん達が殺されなければ歴史は進まない。
これは、平和な国を作り出す為の一種のからくり…。
割り切らないと、冷酷非情にならなくちゃ。
そう必死に思い込もうとするけれど。