恋は千年、愛は万年。



世間話もそこそこにして、ソウ君と一緒にお店の片付けを手伝った。

その後間もなく、僕はソウ君に手首を掴まれて甘味処を後にした。


「ソウ君?どこへ行くのかな?」


早足で歩くソウ君は、顔が見えないけど怒っているわけではなさそう。

てか、僕は何で補導されてるの?何か罪犯したっけ?


「決まっているでしょう?
 土方さんのいる屯所ですよ」

「え…?屯所?!」


屯所に行こうと思っていたから丁度良いと喜んだことに気を取られて、土方、という名前への反応が抜けた。


「全く、十年もどこほっつき歩いてたんですか、あなた」


あ、敬語に戻っちゃってる。

敬語が癖なのかな?

幼い時は普通だった気がするけど。


「ん?全国一周してた」

「…馬鹿なんじゃないの」


簡潔な悪口だ、ひどい。

敬語が抜けるってことは本気で呆れてんだな。


こっちの気も知らないで、と苛立たしげに呟くソウ君の声は耳に入らなかった。




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