【電子書籍化】最初で最後の一夜だったのに、狼公爵様の一途な愛に蕩かされました
 この想いは大事にしまっておくと、誓った、はずだったのに。
 グレンが成長するほどに、彼への想いは増していく。
 美少女のようにも見えた彼は、どんどん背が伸びてゆき、筋肉もついて男性らしい体つきに。
 顔立ちも、凛々しくなって。もう、彼を女の子と間違える者はいないだろう。
 獣人であるために身体能力も高い彼は、逞しく頼りになる。
 さらに公爵家の嫡男ともなれば、女性には大人気だ。
 まだ家を継ぐことも決まっていないのに、白銀の狼公爵、なんて呼び方をする人もいるぐらいだ。

 いつか番を見つけたら捨てられてしまうとしても、彼の妻となることを望む人も多い。
 その証拠に、グレン本人はまだその気がないと言っているのに、多数の縁談が持ち込まれているらしい。
 その縁談を持ち込む者の中に、もちろん、ルイスは入っていない。


 番を見つける嗅覚が働くようになるのは、15歳ほどから。
 ルイスは、グレンの成長が、怖くて仕方がない。
 グレンの番が、自分ではなかったら。彼が、番として他の女性を連れてきたら。
 グレンが15歳を過ぎたころからは、彼が自分の運命の相手を見つけてしまうのではと、不安で不安で仕方なくなった。
 しかし、ルイスの不安をよそに、グレンはその嗅覚を得ることのないまま、18歳に近づいていく。
 まだ、大丈夫。
 彼はまだ、運命の人を見つけたりしない。お前は違うと言ってくることもない。
 アルバーン公爵家の嫡男がそんなことでどうするのだと話す者もいたが、ルイスは、ずっとこのままでいて欲しいと、願ってしまっていた。
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