【電子書籍化】最初で最後の一夜だったのに、狼公爵様の一途な愛に蕩かされました
 オレノツガイ?
 オレノツガイ、とは?

 ルイスの中で、グレンの言葉が繰り返される。
 音としては拾えたが、理解がおいつかない。
 え? どういうこと? え? と更なる混乱へ向かうルイスを置いてきぼりにして、グレンはじいんと、感慨深そうに「俺の番可愛い……」「ルイスが番でよかった……」と言いながらルイスの金の髪を撫でている。
 
 つがいって。私が番って、どういうこと――!?

 その後もグレンは、甘い表情を浮かべながら「ルイス、ルイス」と自分の腕に抱く女性の名を呼び続ける。語尾にハートがついているような気すらしてくる。
 一般的に、番を見つけた獣人は、番一直線になるという。
 本当にルイスがグレンの番なのだとしたら、この状態が「番一直線」というやつなのだろうか。
 ともかく、いったん落ち着いて説明をしてもらう必要がある。

「……グレン様! ぐ、れ、ん、さ、ま!」

 ルイスは、渾身の力で腕をつっぱり、グレンを自分から引きはがす。
 身体能力には相当な差があるため、グレンが本気になればルイスの力で彼を押し返すことなどできないが、グレンはようやくはっとしたらしく、素直にルイスから離れてくれた。
 同じベッドに横たわり、向き合っている状態のままではあるが、なんとか会話になりそうだ。

「あ、あー……。すまなかった。番を見つけた喜びで、つい……」

 やってしまったと思っているらしく、グレンの白い耳はしゅんと垂れている。
 本人の感情を反映する狼耳を可愛らしく感じつつも、ルイスは本題へ。

「グレン様。その、番とは、いったい……」
「……ルイス。きみこそが、俺の番だ」
「……へ? えっと……? でも、昨日まではそんなこと言ってませんでしたよね?」
「……今朝わかった」
「けさ」

 今朝とはまた、ずいぶん急である。
 いやまあたしかに、「いつ番を見つけたっておかしくない」と昨日の自分も言いはしたし、「明日かもしれない」という不安はずっと抱いていたが。まさかのまさかである。
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