【電子書籍化】最初で最後の一夜だったのに、狼公爵様の一途な愛に蕩かされました
 初日は、現在のルイスが、各分野にてどのくらいの力を持っているのかが試された。
 公爵家の面々を育て上げた講師たちと、現当主の妻である、グレンの母。
 そんなメンバーの前で、ルイスはダンス、テーブルマナー、教養など、様々なテストを受けていく。
 緊張してしまい、本来の力を出し切れなかった部分もあるが、それも含めて今のルイスの実力で、彼女の精一杯だった。
 彼らからのルイスに対する評価は、「子爵家の娘としては上出来。しかし筆頭公爵家の嫁としてはまだまだ。更なる教育が必要」であった。
 おおむね、ルイス本人やエアハート子爵家の者たちが思っていた通りの結果だ。

「グレンの番のあなたを、私は大いに歓迎しています。しかし、それはそれ。これはこれ。アルバーン公爵家の当主の妻としてふさわしい水準まで、きっちり指導いたします。覚悟はいいかしら」
「はい。グレン様の隣に立てるよう、精一杯取り組ませていただきます。ご指導のほど、よろしくお願いします」
 
 グレンの母の言葉に、ルイスは力強く頷き、深くお辞儀をする。
 迷いのない返事に、義母となる人も満足そうだった。
 公爵家当主の妻として、厳しい表情をしていた義母の様子が変わる。

「……私も最初は苦労したから、あなたの気持ちも、少しはわかるつもりだわ。一緒に乗り越えていきましょう。あなたなら、きっと、大丈夫よ」

 優しく、穏やかな口調だった。
 グレンの父は獣人だが、母親は人間だ。
 運のいいことに、グレンの父は早い段階で番を見つけ、結婚し、家庭を築いていた。
 その相手が、他国の貴族階級出身の彼女である。
 貴族ではあったが、爵位はそう高くなく。
 さらに他国の人間ともなると、セリティエ王国に合わせた学びなおしが必要だった。
 筆頭公爵家の妻、番として選ばれた女として、相当な叩き上げを行ったのだ。
 今のルイスと似た立場にある義母は、ルイスに必要な教育を施しながらも、彼女を支えるつもりだった。


 グレンの家族はみな、グレンの初恋の人で幼馴染のルイスが番であったことを、歓迎している。
 教育で手を抜く気はないが、グレンの父も母も、息子の番嫁を可愛がる気満々であった。
 指導すべきところはしっかり指導するが、可愛がるときは可愛がる。
 それも、家族総出で。
 厳しさと、愛情。その両方を一身に受けながら、ルイスは新しい生活を始めていく。
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