【電子書籍化】最初で最後の一夜だったのに、狼公爵様の一途な愛に蕩かされました
「お初にお目にかかります。カリーナ様。グレン様の婚約者の、ルイス・エアハートです」

 客人用の部屋で、グレン、ルイス、カリーナが顔を合わせる。
 カリーナは、うさぎのような、たれた耳を持つ獣人だ。
 白い髪に赤い瞳をしているものだから、本人にもうさぎっぽさがある。

 可愛らしいお嬢さん……。

 カリーナに向かって、このアルバーン家にて磨かれたカーテシーを披露しながらも、ルイスはそんなことを考えていた。
 西方の子爵家のルイスが東方の公爵家のカリーナに会うのは、初めてだった。
 グレンはよく、ルイスに向かって小動物のようで可愛いと言うが、ルイスには、このカリーナという女性のほうが、よほど愛らしく見えていた。
 垂れた白い耳に、小柄な身体。四大公爵家のご令嬢というだけあって、身に着ける衣服や装飾品も見事なものだ。
 レースの多いふりふりのドレスに、ヘッドドレス。そんな服装も相まって、カリーナは童話の世界の住人のようだった。

 いくら同格の家で、急な用があったのだとしても、婚約者のいるグレンが、女性と二人きりで会うわけにはいかない。
 婚約者の紹介も兼ねて、ルイスも同席することになったのだ。
 カリーナもルイスに挨拶を返し、三人は席に着いた。
 グレンとルイスが隣に、カリーナが二人の正面に座る。

「……グレン。番を見つけたそうね」
「ああ。婚約者のルイスが、俺の番だ。彼女とは幼馴染で……初恋の人でもあってな。番だとわかったときは、驚いたよ」
「……そう」

 カリーナは紅茶を口にしながら澄ましている。

「……もしかして、婚約の祝いに来てくれたのか?」

 最初に番の話をふられたものだから、もしかして、と思った。
 グレンとルイスは、婚約時、披露のためのパーティーを開いている。
 西方の貴族に加えて、同格の家柄の相手として、四大公爵家の面々も招待していた。
 しかし、体調がよくなかったとかで、カリーナは欠席していたのだ。
 だから、もしかしたら。欠席してしまった分、今から祝ってくれるのではないか。
 そう、思った。

「ええ。元々はそのつもりだったのだけど……」
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