【電子書籍化】最初で最後の一夜だったのに、狼公爵様の一途な愛に蕩かされました
 番だと言われたその日に、ルイスの頭をよぎった疑念が、再び持ち上がる。
 貴族の女の初めてを奪った責任を感じて、番だと言いだしたのではないか。
 そこに、カリーナに言われた「初恋の女を手に入れるため」という疑いも加わった。

「ルイス。少し遅くなってしまったけれど、今からでもデートに行かないか? 今日はきみと一緒に過ごせると、楽しみにしてたんだ。疲れてしまっていたら、無理にとは、言わないが……。気分転換にもなるだろうし、どうだ?」

 グレンは、ルイスの髪をひとふさとり、キスを落とす。
 甘い笑みを、己の番に向けた。
 そんな彼に対する、ルイスの答えは。

「……今日は、やめておきますね。ちょっと、疲れてしまって……」
「……そうか。あんなことがあった後だもんな。今日はゆっくりしようか」

 ルイスは、揺らいでしまった。

 私は本当に、あなたの番なの?
 番を見分けられるようになったという話は、本当?
 責任をとろうとしている?
 初恋の人と結婚するために、番だと言った?

 自分を番と呼ぶ彼を信じた。
 心置きなく愛し合えることになり、嬉しかった。

 しかし、都合がよすぎる。話ができすぎている。
 自分こそがグレンの真の番だと言うカリーナの登場により、ルイスは、なにが真実なのかわからなくなってしまった。
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