【電子書籍化】最初で最後の一夜だったのに、狼公爵様の一途な愛に蕩かされました
 その日を境に、ルイスとグレンはよき友人となった。
 少し内気なルイスと、活発なグレン。
 正反対にも思える二人だが、だからこそ、一緒にいて楽しかったのかもしれない。
 父がアルバーン公爵家へ行くことを知れば、ルイスは一緒に行かせて欲しいと父に頼み込んだ。
 内気なルイスだったが、グレンが参加すると聞けば、子供同士の集まりにも顔を出した。
 グレンのおかげでルイスの交友関係は広がり、笑顔を見せることも多くなり。
 仲良くなったきっかけがグレンの耳だったからか、彼はよく、狼みたいな耳をぴこぴこと動かして、ルイスを笑わせてくれた。
 ルイスは、友情が恋心に変わる前から、グレンのことが大好きで。
 恋していると自覚してからは、もっと彼を好きになった。
 10歳ぐらいのころには、グレンのお嫁さんになりたい、なんて思っていたぐらいだ。
 しかし、それから数年が経つ頃には、ルイスはグレンへの恋心の成就を、諦めることになる。

 公爵家と、子爵家。獣人と、人間。
 身分の差と、獣人族の運命の番システム。
 つがい、というシステムがあることは、この国では幼い子供でもなんとなく知っている。
 しかし、それがどんなものかを理解できるのは、もう少し大きくなってから。
 10代となったルイスは、獣人との恋愛が、その成就が、どれだけ難しいものなのか、わかってしまった。
 グレンは、いつか番を見つける。
 もし見つからず、番以外の者を伴侶として選んだとしても、子爵家の自分では、グレンの家柄には釣り合わない。
 ルイスが彼の運命の相手でもない限り、この想いが報われることはないのだ。
 だから、グレンへの恋心は、ずっとしまい続けると誓った。
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