【電子書籍化】最初で最後の一夜だったのに、狼公爵様の一途な愛に蕩かされました
「俺の、ことが……? だが、そんな嘘をついても、きみ自身の番が現れたら……」
「関係ないわよそんなの! 私は、グレンのことが好き! ずっと好きだった! 私の気持ちは、番なんかに消されたりしない!」
カリーナが生まれたオールステット家は、長く続く獣人家系だ。
数百年前、セリティエ王国の王妃として、獣人の女性が選ばれたことをきっかけに、この国では獣人と人間が共存できるようになった。
彼らは、番だった。
その王妃の孫娘が降嫁してきたことで力を強め、四大公爵家にまで上り詰めたのがオールステット家。
数代前に獣人の血が入ったばかりのアルバーン公爵家とは違い、オールステット家は、この国を象徴するような、歴史ある獣人家系なのである。
しかし、獣人家系の存続はそうたやすいことではない。
結婚後に番が見つかり、配偶者と愛する人が別となった代もあった。
まだ子供がいなかったのあれば、番である愛人の子が家を継ぐことも。
夫婦ともに生涯にわたって番は見つからず、平和に過ごした者もいる。
オールステット家の獣人は、結婚後のトラブル回避のため、嗅覚の発現後、諸国を旅して番を探すことも多い。
カリーナの両親は獣人だが、やはり正式に婚姻を結ぶ前に旅に出ている。
その結果、出会う可能性のある範囲に番はいないとされて。
互いが番ではないことを知りながら結婚し、それなりに上手くやっている。
そんな家に生まれたカリーナだから、獣人の番のことは、よく知っていた。
長く続くカリーナの家系でも、早くに番を見つけて円満に結婚した者のほうがずっと少ないのだ。
カリーナの両親のように、番が見つかることすらない者が多数派だ。
番に出会えたとしても既に婚姻後で、家庭の形が歪になることことも少なくない。
だからこそ、番がすぐそばにいた幼馴染だったグレンのケースなんて、ありえない、夢物語だと感じる。
番の呪いに振り回されてきた家系だからこそ、番というシステムに反発したくなる。
自分だけは大丈夫だと、思いたくなる。
カリーナの赤い瞳から、ぽろぽろと涙が零れ落ちる。
「私は絶対、番の呪いなんかに負けたりしないんだから! だから……私のことを見てよ、グレン……。絶対絶対、あなたのことを忘れたり、しないから。番の呪いに、勝ってみせるから」
「カリーナ……」
もう止まらなくなり、わあわあと泣き出したカリーナは、控えていた兵に連行されていく。
彼女はこれから、裁きを受けるのだろう。
筆頭公爵家の者が、愛する人を手に入れたいから、という身勝手な理由で番を騙ったことへの、裁きを。
「関係ないわよそんなの! 私は、グレンのことが好き! ずっと好きだった! 私の気持ちは、番なんかに消されたりしない!」
カリーナが生まれたオールステット家は、長く続く獣人家系だ。
数百年前、セリティエ王国の王妃として、獣人の女性が選ばれたことをきっかけに、この国では獣人と人間が共存できるようになった。
彼らは、番だった。
その王妃の孫娘が降嫁してきたことで力を強め、四大公爵家にまで上り詰めたのがオールステット家。
数代前に獣人の血が入ったばかりのアルバーン公爵家とは違い、オールステット家は、この国を象徴するような、歴史ある獣人家系なのである。
しかし、獣人家系の存続はそうたやすいことではない。
結婚後に番が見つかり、配偶者と愛する人が別となった代もあった。
まだ子供がいなかったのあれば、番である愛人の子が家を継ぐことも。
夫婦ともに生涯にわたって番は見つからず、平和に過ごした者もいる。
オールステット家の獣人は、結婚後のトラブル回避のため、嗅覚の発現後、諸国を旅して番を探すことも多い。
カリーナの両親は獣人だが、やはり正式に婚姻を結ぶ前に旅に出ている。
その結果、出会う可能性のある範囲に番はいないとされて。
互いが番ではないことを知りながら結婚し、それなりに上手くやっている。
そんな家に生まれたカリーナだから、獣人の番のことは、よく知っていた。
長く続くカリーナの家系でも、早くに番を見つけて円満に結婚した者のほうがずっと少ないのだ。
カリーナの両親のように、番が見つかることすらない者が多数派だ。
番に出会えたとしても既に婚姻後で、家庭の形が歪になることことも少なくない。
だからこそ、番がすぐそばにいた幼馴染だったグレンのケースなんて、ありえない、夢物語だと感じる。
番の呪いに振り回されてきた家系だからこそ、番というシステムに反発したくなる。
自分だけは大丈夫だと、思いたくなる。
カリーナの赤い瞳から、ぽろぽろと涙が零れ落ちる。
「私は絶対、番の呪いなんかに負けたりしないんだから! だから……私のことを見てよ、グレン……。絶対絶対、あなたのことを忘れたり、しないから。番の呪いに、勝ってみせるから」
「カリーナ……」
もう止まらなくなり、わあわあと泣き出したカリーナは、控えていた兵に連行されていく。
彼女はこれから、裁きを受けるのだろう。
筆頭公爵家の者が、愛する人を手に入れたいから、という身勝手な理由で番を騙ったことへの、裁きを。