【電子書籍化】最初で最後の一夜だったのに、狼公爵様の一途な愛に蕩かされました
 アルバーン家の獣人三兄弟に好かれる人物、ルイス・エアハートは、子爵家の次女だ。
 親同士の付き合いが深かったため、彼らは早い段階で知り合っている。
 腰まで届くふわふわの金の髪に、優しい緑の瞳。
 やや小柄で、高身長の者が多いアルバーン家の人間からすると、小さくて愛らしい。
 グレンと同じ12歳だが、すでに身長にはそれなりに差がついている。
 昔は少々内気なところがあったが、グレンにくっついて回るうちに社交的になってきて。
 グレンからすれば、自分を慕う女の子が懸命についてきて、だんだんと明るくなっていったのだから、それはもう可愛いものだった。

 獣人は、身体能力が高く、見目もよいものが多い。
 そのうえ公爵家の嫡男ともなれば、グレンは女子に大人気だった。
 まだ互いに10代前半だというのに、「グレンさまあ」と猫撫で声でグレンの腕などに触れてくる女子も多い。
 四大公爵家の嫡男にアピールしておこう、という考えそのものは間違ってはいない。
 けれど、それを向けられる本人からすれば、なかなかに面倒くさいもので。
 そんな中、肩書ではなくグレン本人を慕って、ぱあっと笑顔を見せてくれるルイスの存在は、彼の癒しとなっていた。

「家柄も、人種も関係ない。俺は、ルイスと一緒にいたい」

 弟妹の前でそう話すグレンの表情は、真剣そのもので。
 ミリィとクラークもルイスのことは大好きだったから、告白をすると意気込む兄を、とめることはしなかった。


 グレンは、次にルイスがアルバーン邸にやってきたとき、彼女に告白することを決めた。
 予定通りなら、数日後にはエアハート子爵がやってくる。
 おそらく、ルイスも父についてくるはずだ。

「ルイスに、気持ちを伝えるんだ……!」

 私室に戻ったグレンは、カレンダーを見ながらそう意気込んだ。



 しかし、告白が行われることはなかった。
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