麻衣ロード、そのイカレた軌跡⑧/発熱の果実たち、迷宮へ…!
龍虎、第2章へ…/その14
ケイコ


案の定、黒原吹子さんもテーブルの横に付き、これからは4人での話し合いの場になるようだ

まずは荒子さんが口火を切った

「…今回は私の力不足でえらいお騒がせをして、誠に申し訳ありませんでした」

荒子さんは波沢さんに向かって深々と頭を下げた

「ああ、そんなのいいから…、ねえ、合田さん。とにかく、なんとか”区切り”がつけられたようでよかったわ。各他県も皆、安堵してるし‥。ご苦労様だったわよ、合田さん。何と言っても東京埼玉の都県境は私達の先駆者だからさ…」

これに対して波沢さんは慌てて半腰になって、恐縮していた

で…、黒原さんと目を合わせて、何やら申し合わせしてるような感じだった

これ、かなり意味深な場面じゃないかな…

...


案の定、その後黒原さんが口を開いた

「荒子‥、まず私の口からさ、今回丈子ちゃんとマキちゃんを取りもった理由を言うよ」

出た…!

なにしろ今回は、そもそもが”そこ”だったから…

いくら個人的に懇意の仲とはいえ、黒原さんともあろう方が”あの”岩本真樹子と”あの”タイミングで、南玉連合を規範として歩んできた県外の後発組織を繋いだのか…

反南玉のシンボル格である岩本が、南玉内部に身を置く本郷麻衣と結託していることをこの人が知らないはずはない訳だから、黒原さんのアクションは南玉を窮地に追い込む行為に等しかった

そんなことをなぜ…

誰もが抱えていたその疑問が解けるぞ…


...


「…マキちゃんが本郷麻衣に傾倒してるのは、当然知っていたし、彼女と共に都県境の土台をひっくり返す計画をおし進めているのも薄々はね…。私はね、何も荒子達を追い込むつもりで丈子ちゃんを岩本真樹子に引き合わせた訳じゃない。でもその結果、南玉総長の荒子を、こんな酷い目に遭わせた責任は私にある。まずは謝るよ。…荒子、申し訳ない。許して欲しい…」

黒原盛浩さんの未亡人吹子さんは立ちあがって、荒子総長に頭を下げた

さすがだ…

この都県境で、黒原未亡人が猛る女達に留まらず、愚連隊からも特別な存在として捉えられているのが納得できるよ

「黒原さん、すべては私の不徳に尽きます。先輩はあくまで、広い視野を持たれての判断だったったと承知してますし。いつまでも、ご面倒おかけして申し訳ありません…」

「荒子‥、あんた、ホントに大人になったわね…。紅ちゃんがこの場にいたらさぞ喜んだでたろうね」

黒原さんは目を細めて苦笑いだ(私も苦笑)

そんで、私もそう思うって

紅子さんは、狂犬娘の”素”を誰よりも評価していたもん

この人は単なるイケイケではなかったんだよ、やっぱり

で…、その間、波沢さんは何度も頷いていた

その感慨深げな表情が、私あたりにとったら結構、衝撃だったかな…




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