麻衣ロード、そのイカレた軌跡⑧/発熱の果実たち、迷宮へ…!
ネオフレーム/その3
ケイコ


「…先ほども言いましたが、本郷とはもう何もわだかまりはありませんので。私は出戻り歓迎、どうぞ、どうぞってとこです」

「アハハハ…、全くなんとも豪気な狂犬娘だね、あんたは。でもさ、お隣の横田さんはどうなの?麻衣に対しては荒子のように清算できてないんじゃない?」

すかさず来たわ…

黒原吹子さんは、随所で私をテストするかのような言い回しで、間髪を入れない

なら、私は直球で行くよ


...



「はい…。私はわだかまりがないとは絶対に、絶対に言えません。でも、”ヤツ”が戻るんなら、望むところです。私は殺し合い寸前を演じた相手でも、目の前でコンニチワと言ってくれば目は背けません。…ヤツと一緒になろうが、妥協せずやります。ですから、総長の意には反対しない旨、告げています」

「まあ…!あなたにも、ほとほと驚かされるわね…。さすが、紅ちゃんが小学生の頃から目を付けてた逸材だけあるわね。やっぱり、ただの普通の女子高生じゃないわ…。ねえ、丈子ちゃん…」

「ええ…。もうびっくりですよ。でも、頼もしいわ。これなら人数が減っても南玉は依然、都県境をけん引できる!…合田さん、横田さん…、私は神奈川、千葉、茨城のみんなに今の私の思いを伝えるからさ。頑張って…」

気が付くと、荒子さんと波沢丈子さんはソファから立ち上がり、両手を握りあっていた

パチパチ…

黒原さんは私に目配せをして、私たち二人も同じく立ちあがり、ほぼ同時に拍手していた…


...


「…ケイちゃん、今日はありがとうな」

ベッツからの帰路…、西咲の先輩が運転する車に同乗して私の自宅前まで到着すると、荒子さんは車から降りて私の両手を軽く握り、静かにそう呟いた

「今週中には、南玉の総会を開く。そこで今日のシュミレーションは全部通すつもりだ。…多美にはすべて言っておく。いづみにも…。だが…、頼むな、ケイちゃん」

これも呟くようだったが、私にはとても力強く伝わったよ

荒子さん…

この人と私…、そして、紅子さんと私たち…

やっぱりだわ…


...



ここは猛る女の聖地だ

麻衣という、あそこまでの女が現れたからには、私たちはそれぞれで黙っていられないって…





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