麻衣ロード、そのイカレた軌跡⑧/発熱の果実たち、迷宮へ…!
龍虎、第2章へ…/その6
剣崎


総本部へ着くと、さっそくケイコを会長が待つ庭の池の前までエスコートした

「会長…、お嬢さんをお連れしました」

「はは、来たか。剣崎、そこに掛けてもらえ。それと、飲み物もな」

「はい…」

俺は池の前の白いガーデンチェアを引いて、ケイコに会釈した

彼女は硬い表情のまま、イスの前まで進んだ

「先日はお世話になりました。本日はお招き、ありがとうございます」

「ああ、よく来てくれた。まあ、座りなさい」

「失礼します…」

ケイコは体育会系のノリで、歯切れのいいあいさつの後、イスに腰を下ろした

「ハハハ…、何とも礼儀正しい子だな。麻衣とは全然違うが、似ているところもあるようだ。だから、ここで俺の前にいるんだろうからな」

ふふ…、この会長の言い回しも、いきなり一種のダブルミーニングだな


...



まあ、麻衣とこのケイコは性格も何も正反対と言えるが、確かにどこか共通点というか、似通った面があるように思えてならない

うーん…

5月にここで、麻衣がこうして会長と昼食をとった時を思い出すな

まさにあの時、麻衣は会長と1対1でいろいろと語り合い、相馬豹一という稀人の真髄を掴んだ…

その日を境に、麻衣はそれまでの迷いを捨てることができ、大きく化けた

以降、麻衣は怒涛の勢いで疾走し続けたわ

目の前に立ち塞がるものを次々と駆逐していくその様は、小柄な少女なのに、ごっついラッセル車に見えたもんだ

さて、今夜のケイコは、稀代のカリスマ極道として業界を席巻してきた相馬豹一とフラシュを交わし、一体いかなるものを醸し出すことができるのか…

俺は、一歩下がったところで目撃者とならねばならない…

この時、そんな使命感らしきものを帯びながら、俺は自分にそう言い聞かせていた




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