麻衣ロード、そのイカレた軌跡⑧/発熱の果実たち、迷宮へ…!
龍虎、第2章へ…/その7
ケイコ


やっぱり緊張するわ

だいたいこの人、この都県境では有名人だよ

れっきとしたヤクザの親分だけど、地元の住民は名士と捉えているんだ

商店街で買い物をする主婦や学校へ通う子供だって知ってる

”あの人は立派な人…、この地域の貢献者…”

相馬豹一のことを、ほとんどの人がそう評価してるよ

私だって、その辺のやくざとは違うって思ってきた

少なくとも悪い印象はないんだ

...


その摩訶不思議な世論が根付いた第一の理由は、この人が率いる相和会が、そもそも関東と関西の広域暴○団の傘下に組み込まれない、日本でも数少ない独立団体だから…

それは、コテコテの広域暴○団がこの地域に進攻することを防いでくれたことに等しいと…

いわば地元住人にとっては”味方”という訳だ

もっともこれは最近になって知ったことで、子供の頃はやくざでも弱い者いじめをしない人たちって、そんな解釈だったな

要するに、強きをくじき弱きを助ける庶民の側に立つヤクザの親分って目で見れていたと思う

その人と今、2Mも離れていない距離で面と向かってんだもん

でも、初対面の時も感じたが、怖いイメージはあまりない

勿論、凄い貫禄だし、威圧感はずしずし伝わってくる

だけど、あの業界の人たち独特の陰鬱な怖さははっきり言って皆無なんだよね

やっぱり、不思議な人だよなあ…


..


「ケイコちゃん、君と麻衣を区別する気は毛頭ないが、やはり育ってきた環境や中学高校と通ってきたその”姿勢”には、相当違いがあるだろうからな。これから先へ進むにあたって、確認すべきは、ここでしっかり念押ししておかないといけない。そこで、今夜は少々リアルな話もすることになるが、気持ちの用意は大丈夫かな?」

「大丈夫です」

どうやら、今夜は通り一遍の表面的な話だけではないようだ…



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