麻衣ロード、そのイカレた軌跡⑧/発熱の果実たち、迷宮へ…!
龍虎、第2章へ…/その8
ケイコ



「うん…。まず、既に君も聞き及んでると思うが、麻衣が小指の骨を差しだし、”あの夜”のケリを着けた。これで、お嬢ちゃんたちの世界も次の段階へ入ることになる。今度はそのフィールドで、麻衣と正面から競い合いぶつかり合って欲しい。それが俺の希望だ」

会長さんはテーブルに両肘をつき、視線は私の目一点を見つめていた

その顔色は決して優れない

でも、どっと精気が放たれているように感じる

「…その際、二人にはあくまで同条件でこっちも平等に接したい。その条件の一部が、先日のクスリの件だ。言わばこれは二人側からすればリスクになる。その対価として金銭的な援助と相和会の力を与え、俺自身の意志でバックアップする。これはそっちのメリットになる」

会長さんの言葉は滑舌もよく、とてもわかりやすかった

私は無意識に何度も首を縦の振っていたよ

「…それを君は受け入れ、殺し合いも辞さないタイマンでも決着がつかなかった麻衣と、互いに己の信条をもってぶつかり合う。このことを先日、君からここで了解をもらった。だが、何しろ話したその場での決断だったしな、今一度、尋ねよう。遠慮はいらないから、躊躇してるなら断ってもらって構わない。どうかな?」

「…先日のお答え通りで構いません」

「いいんだな、本当に…」

「はい。あの夜は確かに興奮していたし、即断は勢いもあったかもしれません。でも、その後、しっかり考えました。その上ですので」

私は言い切った

ああ、ここで決まったな…

...


「…わかった。そういうことなら、これから具体的に何点か話す。疑問や不明なことがあったら、その都度聞いてくれればいい。…まず、あのクスリだ。俺が仕込んだ時点では違法薬物に指定されていなかったが、今は違う。所持、服用が警察に知れれば御用となる。未成年でもな。言うまでもないが…。それは”承知”でいいんだな?」

「はい。この前聞いて、その通り理解しています」

会長は次々とリアルな現実を突きつけてきた

それに、私は躊躇なく答えている…

それは不思議な程…

「そうか…、なら次だ。君はこれより俺の遠縁の娘2号となる。組の中はもとより、業界関係者にもそれで通す。もっとも、でっち上げだってのは最早わかっちまうだろうが、形はそれで貫く。まずここまででも、16歳の娘がやくざと深くかかわり、犯罪に手を染めたことになる。その自覚を持って。…これは表ざたになれば、家族や友人、それに未来とて失うことを意味すると言っていいだろう。これも覚悟でってことでいいのか?」

「それも覚悟してのことです」

自分でも驚いている

こんなたいそうなことまであっさりとだ

でも、決して流されてなんかいない

ちゃんと自分の頭で考えてのことだ

いや、はなからそう自分に言い聞かせてるんじゃないのか…

正直、そんな一抹の心のつぶやきはあった…





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