麻衣ロード、そのイカレた軌跡⑧/発熱の果実たち、迷宮へ…!
龍虎、第2章へ…/その10
ケイコ&剣崎


「…それは、迷宮だ、ケイコ…」

相馬豹一はそう答えた

迷宮って…


...


「ケイコ、大丈夫か…」

ハンドルを握ってる剣崎さんが助手席の私を横目に、声をかけてくれた

「大丈夫です…」

「悪いが、会長との会話は数メートル離れたところで、一通り聞かせてもらった。これも仕事なんでな、了解してくれ」

「いえ、平気です」

相馬さんとの会話を聞かれてたことなんか全然平気だ

しかし、その相馬さんから聞かされた言葉のいくつかは、はっきり言って平気じゃないよ

私はこれからどこに向かおうとしているの…?

全然、普通の高校生じゃなくなっていくよ

「剣崎さん…、私、自分で決断してるのに、何かに手をひっぱられてるみたい。これから進んでいく道へと…」

「ケイコ…」

この間、私の視界は車のフロントガラスの向こう側に覆われていた…

ライトに照らされた偽りの明るい道をぼんやり凝視しながら、私はまるで夢遊病者の独り言だよ…

...


相馬会長、いや相馬豹一と横田競子の約1時間弱にわたる夜の対話は、ある意味、壮絶な言葉のキャッチボールだった

年が2まわり以上離れた男女は、今夜、いずれ訪れるかもしれない”光景”を前提として言葉を交わした

その前提こそ、麻衣もやんわりとはイメージしてるものなのだろう

”晩年”を覚悟した相馬さんは、この春、年端もいかない少女と運命の出会いを成し遂げた

俺はこれで終わると思っていた

それは確実に…

しかし夏を迎え、もう一人の少女とも衝撃の巡り合いが待っていた

今夜、ケイコは相馬さんとの会話によって、さだめのようなものを感じたのかもしれない

いや、厳密には火の玉川原からここへ連れ、相馬さんと初対面を果たしたあの夜から…

彼女を送る車中、俺たち二人はほぼ無言だった…





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