竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~
「ふ、ふう、ふ」
「エリー、鼻から、ゆっくり息をして、大丈夫、大丈夫だから……」
一度唇が解放されたとき、クーはそう言った。
すぐにもう一度ふさがれた唇は、エリーが知るような親愛のキスでも、はしたない情愛のキスでもありはしなかった。
「ふー、ふー」
クーは、エリーを救うためにキスをしていた。
エリナの呼吸が次第に落ち着きを取り戻す。
涙でぐちゃぐちゃになったエリナの背を、赤子をあやすようにぽんぽんと叩いて、クーは目を細める。
なんで。
エリナはぽろぽろと涙をこぼして、クーの腕の中で体から力を抜く。
こんなにも怖いのに、懐かしい匂いがする。
ただそれだけのことで、はちみつ色の、同じ髪色をしたあの子のことを思いだしてしまって。だからきっと、そのせいで力が入らないのだ。