竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~
王都へは馬車で行った。
まがいなりにも竜王への輿入れだというのに、竜王の遣いからよこされたのは僅かな路銀と形ばかりの婚礼衣装だけだった。
持参金が要求されなかったのは良かったけれど、まるで身売りのようだ。いや、実際のところ、身売りなのだろうけれど。
エリスティナははじめ、婚礼自体が悪趣味な冗談で、だからこそ、このような最低限にも届かない品物しか贈られなかったのかと思った。
それくらいに、エリスティナの婚礼準備は粗末なものだった。
一日二日、旅行に行くような持ち物ーー下着と、わずかな普段着と、幼い妹たちが作ってくれたアクセサリー、暇潰しの本などーーを小さなトランクに詰めて、婚礼用に用意された白い衣装を着て、借りた馬車に乗り込む。人間貴族であるハーバル伯爵家の財政では、自前の馬車など持つことすらできないのだ。