竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~

 人間貴族は竜種の家畜だ。
 きっと、ダーナもつらい思いをしてきたのだわ、と痛ましい気持ちになってエリナは目を伏せる。
 けれど、ダーナはあっけらかんと続けた。

「もっとも、人間貴族、という言葉は、もう20年も前に廃止されてしまったのですけれど。エリナさまは歴史にも明るくていらっしゃるのですね」

 ダーナはそう言って、エリナの髪を桶に張った湯で流していく。
 エリナの、深紅より少し薄いような赤い髪が、泡から現れ、その色を濃くしている。

「人間貴族が、廃止?」
「ええ、その通りです。ご存じなかったのですか?」

 意外そうにダーナが目を丸くする。
 人間貴族という言葉を知っていたのに、廃止されたことを知らない、アンバランスな知識を不思議に思ったらしい。
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