竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~

「ごくまれに、劣等個体で生まれる竜王がいるのです。歴史上でもほんのわずかですが……。どうして弱く生まれてしまうのかわかりません。もしかしたら、歴史上にわずかに開いた竜王不在の時期は、その劣等個体で生まれた竜王が、弱いまま命を落としたせいと考える学者もいます」
「まれ?」

 エリナが目を瞬くと、ダーナは続けた。

「はい、まれです。けれど、弱く生まれた反動なのか、劣等個体で生まれた竜王は、ほかの竜王よりも強く成長することが多いのです。今代の竜王陛下は、歴代のなかでもひときわ魔力量が多く、またその翼も力強く、もしかすると歴史上最強の竜王でないかとおっしゃるかたもいるくらいなのですよ」

 竜王を尊敬しているのだろう。しわの寄った目じりが細くなって、嬉しそうにほころぶ。

「そう、そうなのね……」

 同じ劣等個体を育てた身として、その貴族令嬢には頭が下がる。
 けれど、どうしてそれが人間貴族を廃止することになったのか、いまだに納得はできない。
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