竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~
「…………そのお方は、竜王陛下にとって、とても、本当にとても、大切な方だったそうです。20年前に即位なさってから、先王陛下とその番を引き離して幽閉するほどに」
「竜種と、番を……?」

 その言葉だけで、エリナは今代竜王の怒りがいかほどのものかわかった。
 竜種は最強種だ。

 けれど、番を得た竜種は、最強であると同時に、ひどくもろい。
 竜種は番を得るとその伴侶に逆鱗、と呼ばれる特殊な鱗を飲ませ、相手を不老のものにする。

 一度得た番を失えば、離れれば、心を壊してしまうからだ。竜種が何よりも番を優先するのは、ただ番を愛しく思うからではない。

 魂で愛した相手を失えば、自分が壊れてしまうからだ。
 竜種は、番とともに死ぬ。ロマンティックな言葉のように聞こえるが、実際のところ、番を失った竜種は発狂して自害してしまうか、衰弱してゆるやかに死してしまうのだった。

 だから、基本的には番と竜種を引き離すことはタブーに近いし、死刑より重い刑罰として知られている。……それを、課したというのか。

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