竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~
 エリナの作ったシチューをおいしいとほおばっていたクーの表情を思い出す。
 あんなにやさしい、あたたかいひとをそのような凶行に走らせ、しかし竜種にのみ都合のいい悪しき風習を断ち切らせた、その人間貴族の令嬢はどんなひとなのだろうか。

 それに対し、クーに求められ、番として連れてこられた自分。
 強引だったけれど、亡くなった育ての親のぬくもりを感じたと言って泣いたあの涙はけして嘘じゃなかった。

 クーの中で、その令嬢の存在が大きいことを知った。だからこそ、ただの番でしかない自分が空虚に感じてしまう。
 竜種の番を羨んだことはない。
 ただ、竜王の番であったカヤのことを、嫌いではなかった、と言えば嘘になる。
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