竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~

 エリナはそう言って、ダーナを下がらせた。

 クーのことは嫌いではない。
 けれど、番だからと言ってはいそうですか、と受け入れられるほど単純な話でもない。

 恋をしたことがないから、どういうものが恋なのかをしらない。
 クーに恋がしたい、と初めて思った。
 好きになれれば楽だから、ではなく、クーのことを知りたいから。
 だって、エリナはまだ、クーの本当の名前も知らない。

 ――クリス、私、どうやったら、誰かを愛せるのかしら。

 かつて心から愛した竜種の子供。クリス。はちみつ色の髪がクーとよく似ていて、目に冴えるようなその色を見るたびに胸が締め付けられるように苦しくなる。
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