竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~
 エリナの恋、エリナの愛、エリナの慕情は、そういうものをすべてひっくるめて、あの日に置いてきてしまったのかもしれなかった。

 エリナの寝かされていた部屋の窓から見えた庭の花々は、春の、色素の薄い、やさしい色をしてエリナを迎えてくれた。
 ここは小さな家のようね、と思った。ここは、城の敷地内に作られた赤い屋根の、庭付きの家。畑があれば、あの森の家とよく似ていると思う。

 空を見上げる。突き抜けるような青空は、胸にぽっかりと穴の開いた気持ちを抱えたエリナには、ちょっとだけまぶしかった。
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