竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~

 真の竜王。劣等個体として生まれなければならないほどに強大な力を持ち、その指先を動かすだけで世界を滅ぼす力を持つ竜王をそう呼ぶ。
 彼らは、劣等個体に生まれついても高い知能を持っていた。

 いいや、持っているのではない、もともと、世の理すべてを理解して生まれてくる――神と呼ばれる存在に近しい竜王が、真の竜王だ。
 クリスの先代も、その前も、その前も……すべて凡庸な通常の竜王がブルーム王国を統治していた。

 久方ぶりに世界に生まれ落ちた真の竜王、それこそがクリスだった。
 不帰の森に入れば死ぬ。そういう魔法をかけたかつての竜王の魔法は、真の竜王であるクリスの卵を抱いたエリスティナに敬意を払った。

 この人間を傷付けてはなるまいと感じ取ったのだろう。
 森は、クリスを守ろうと必死なエリスティナのために食料を渡し、害獣から遠ざけるように枝木を動かした。

 不帰の森のくせに、魔法の掛かった森はエリスティナを誘導すらして、いつかの竜王が建てた小屋へと住まわせた。
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