竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~
 すべては、エリスティナが守る真の竜王を育むために。

 思えば、クリスを捨てた両親も、強者のようでひどく弱い、アンバランスな気配をもつクリスに――卵の時分で――恐怖を抱いたのだろう。
 劣等個体でも捨てずに育てるものは皆無ではない。
 それなのに、あのような王宮の端に捨てた両親は、強者の気配に敏感なたちだったのかもしれなかった。

「わあ、おいしそうだね、エリー!」
「ふふ、おかわりはたくさんあるから、たんとお食べなさい、クリス」
「うん!僕、エリーの料理が世界で一番おいしいと思う。大好き!」
「もっとおいしいものは、たくさんあるわよ……?」

 エリスティナはそう言って、不思議そうに、けれど目の奥は嬉しそうに、ほほ笑む。
 エリスティナのそういう笑みが好きだった。忘れたことなど片時もない。
 全能の竜種――真の竜王とはいえ、その時は劣等個体。体は未発達で、内面がどれほど力ある存在でも、意識はどうしたって幼い体に引きずられた。
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