竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~
クリスの意識は、これがまずしい食べものだと知っていた。
けれど、それでもたしかに、クリスにとって世界一おいしい食べ物はエリスティナが作ったシチューだった。
――なにそれ、ふふ。まるで竜種の番関係みたいね。
エリスティナがそう言ってはじめて、クリスは己がエリスティナに抱く愛情が、己の伴侶へ抱くべきものだと知った。
クリスは、エリスティナを母親だと思ったことはなかった。
それを不思議だと思ったこともない。ただそばにエリスティナがいることが心地よくて、たとえがたいほど幸福で、エリスティナといる今が、何にも代えがたい、宝物のような時間だということが、クリスの中の常識だった。
クリスの体にある、番を察知するための、魂を嗅ぎ分ける器官はまだ未発達で、だからクリスにはエリスティナが己の運命――己の番だということを知るすべはなかった。